ほぼ一週間前から寺子屋に夜な夜な猫ちゃんが来るようになりまして・・・ある雨の降る晩に、私、ついにドアを開けてしまいまして・・・
しろ猫なので、しろちゃん。
ご飯をあげたから、なついたんではないと思うんですが、やたら人懐っこい猫ちゃんなのです。絶対に迷い猫に違いないと思ってて、そろそろ迷い猫のポスターでも作って街中に貼ろうかなと思ってたんです。片目が灰色になってて病気っぽい。けれど元気。綺麗な真白な姿はやさしい。女性猫。
夜な夜な、編み物をする私に突進して、甘えて「もみもみ」がすごいの。
で、しばらくすると、お気に入りの私の椅子で眠ってる。
しろちゃん、と塾のドアを開けると、「な?」と答えてね。
よくお話をする猫なのです。
な?ナナナ?な?って感じで。
昼間は窓を開けていて、いつでも入れるようにしておいて、ご飯とお水を置いていたのです。
でも、ちゃんと私の仕事の時間にはどこかへ散歩をしていて(きっと子供たちがうるさいんだからだと思うのですが)私が晩御飯を終えて塾に帰る頃には帰ってて。
それが、先日、仕事に出てきたんだけど姿が見えないくて。午後は私の椅子のお気に入りのウサギの座布団で寝てたりしてたんだけど。
あれ?と思ってたら、うちの両親が言うには、どうやら車に轢かれちゃったって。
私は絶句して、何度も嘘じゃない?と聞いてみたり・・・うちの親の言うことですからね。信じられない。前には嘘ついて猫を捨てられたことがあるので余計に信じられません。
何度聞いても、父が「見た」と言う。
なんで電話してくれなかったの!
野良猫だから、と言う。
うちの両親はこういう人なんですよ。
といっても世間の人はそれが普通なのよね。
却って叱られ(いつものことだけど)ご飯あげたらいかんと、なじられ、馬鹿にされ・・・
仕事をしながら、しぃんとさびしかった。だけど、どうしても信じられない。予感もなかったし、そんな気がしません。
夜、仕事を終え、窓から「しろちゃん」と呼んでみた。いつもしていたように。数日だけど。
返事はない。
外に出て、また塀のあたりで呼んでみた。すると、猫の声がする。すごい声で鳴いている。でもしろちゃんの声じゃないな・・・。お前、しろちゃん、見た?と聞いてみた。相変わらず声はする。うーん。違うよなあ。でもまた声のするほうに行ってみた。
すると、塀の下のほうは人の土地で、木があったり畑になってるんだけど、白い姿が私を見上げてるではないですか。
しろちゃん!生きてるじゃん!!!よかった・・・・・・
うずくまって私を見て鳴いている。さっきから鳴く声はしろちゃんだったのです。
初めて聞く、しろちゃんの叫び声でした。
私はしろちゃんのところまでなんとか草を踏み分けて行き、抱きかかえたのですが、動けないようでした。前足は動くけれど後ろ足がどうもいかん。
あわてて動物病院に電話をかけたけれど出ません。
近所なので直接行くことに。
インターホン2回で先生は出てきてくれました。
レントゲンをとったり診察をしていただいたのですが、どうやら骨盤が折れているとのことでした。そのままにしておいたら骨はくっつくらしいのですが、後々排便がうまくいかなかったりして通院しないといけないかもしれないとおっしゃいます。他の先生を紹介すると言って手術を勧めます。一週間以内にしないとむずかしいと言うの。
手術・・・・
野良猫にお金をかけて見返りがあるかどうかはわかりませんが、と先生はおっしゃるのですが、私は迷いました。
見返りやお金ではなくてね。
動物には自然治癒力があって治るのではないか、本当に手術をしてもいいんだろうかと。
その戸惑いは、昔、シーズー犬を飼っていて、手術中に死んでしまったことがあるからなのです。ちょっとトラウマになっていたの。ちょっと弱い子だったので仕方のないことだったのかもしれないのですが、車に轢かれて帰ってきて、あわてて病院に連れていったらすぐ手術になって、そのままだったのでした。手術中に待っていた気持ちが忘れられません。
しばらく、その病院の前は通ることができませんでした。
で、その病院の先生を紹介するからと言うので・・・。
手術は考えます、と言ってとりあえず帰ったのですが、先生から電話があり、明日もう一度来てくれませんかと言う。もう一回見てみてできるようなら僕がしますって。お願いしますと私は言って、その晩は寺子屋でしろちゃんを見ながら寝ました。私の姿を見たら少しは安心するだろうから。
しろちゃんは寝ています。
痛いんだろうな・・・・痛み止めを打ってもらったけれど。
次の日、また病院に行ったのですが、どうも先生がわかりません。
カレにメールをしてみたのですが、カレも犬を飼っててこのあたりの病院のことはわかってるし・・・。返事は、お金になりそうだから奥さんに言われて電話したんじゃないのって言うの。うーん。誠実そうな方だけど・・・確かにね。この奥さんに私は嫌われるのかもしれないけれど、やたらツンツンした方なのです。噂もあります。
やはり手術を私が迷っていると、先生はやはりもうひとつの病院の先生にも診てもらったらどうでしょうとおっしゃいます。そうですね・・・と私はとりあえず帰ったのですが。
煮え切らない私に先生は、また電話を下さいまして、s病院の先生に連絡をしておきましたから行って診断してもらって下さいとおっしゃいます。一番いい方法をとったほうがいいと思いますのでって。うーん。やはり自信がないんだろうか・・・。
でも、そうよね。確かにね・・・。
私の勝手でしろちゃんを不具猫にしちゃいけないです。
けれどs病院・・・。
行きました。診察してもらいました。レントゲン写真を持って。
するとそのs先生は脊髄も損傷していることを診たのでした。前の先生は言ってなかったのですけれど・・・麻痺があるとは言ってましたが。
麻痺はそこからきているらしいですね、と先生。
まず猫ちゃんを置いてってもらって内科の治療をしてからその手術をして、その後骨盤の手術をとおっしゃいます。
手術をしても麻痺が残るかもしれないとも言います。
手術をするか。しないか。
迷いました。
とても。
もし、シーズーのリキちゃんの前の時のようになったらどうしよう。
手術をして元のようにならないかもしれない。けれどまた元気に元の姿になるかもしれない。
親は、そんな私を勿論止めます。親には相談できません。自分ひとりで決めるしかないのです。
あんたが猫好きだから誰かが捨ててったのよ、と母は言います。
そうかもしれない。そうでないかもしれない。もともと野良猫かもしれない。けれど迷い猫かもしれない。何度私はしろちゃんに「どっから来たの?」って聞いたことか。
でも、しろちゃんには今、私しかいない。
手術をすることになりました。
というか、私が言う前にs先生は既にする気持ちのようでした。
ところで、この2人の先生に病院に来たことないですか?と聞いてみたんですがわからないとのこと。目は病気か、先天性かで、もう見えてないようです。年も若いか若くないかわかんない・・・。割合若いかも、とのことでした。
今日、一回目の手術でした。
午後手術だったので朝行って顔を見たのですが、エリザベスカラーをしてて、うーん、痛々しいのですが・・・・・・
手術後も麻酔からまだ覚めていなくて痛々しくて・・・
でも、前とは違う。
絶対に死なない。
そう思い、私はがんばっています。
体がつらいのはしろちゃんです。なんとも言えません。
怪我をする前のしろちゃん。
おとなしくて、ほんっといい子なのです。
つらいですねー。
ニンゲンと違ってニンゲン語を話さないから。猫語を話せるようになりたいよ〜。
こういう時は、色々と考えてしまうものですね。
いろんな声も聞こえます。
ずっと飼っている猫じゃないしって。見返りもないし?すごい高いお金を払って?バカじゃない?
手術を迷っている時はものすごく親の声が世間の声そのまんまなんだなって思いましたし、私は世間とズレてるんだなって劣等感も。親もこんな私を子供に持ってどんなにしんどいでしょうね。
こういう時、同じ気持ちを持って助けてくれる人がいたらどんなに楽だろう。一緒に看病してくれる人が傍らにいたら。それはわがまま。
でもきっとわがままな私は独り身だし私は私一人でやっていくしかないとわかりました。
しいんと心の中を聞いてみると、私には、しろちゃんはかけがえのない存在なのでした。私のトラウマも解消される時がきたんでしょうか。
もみもみするしろちゃん。
がんばれ。
待ってるから。